ティンパニチューニングについて
こんにちは、前回から「コラム」として発表しておりますが、だいぶ時間がたってしまいましたごめんなさい...
第二回は『ティンパニチューニング』について触れていきたいと思います。
『ティンパニ』は前回で「バランス式」「クラッチ式」「ギア式」があると触れてきましたが、多くのオーケストラ、吹奏楽で「ペダルティンパニ」と言えば「バランス式」を扱いのことと思います。
「バランス式ティンパニ」は自動車のアクセルペダルの様な形をしていて「つま先側」を踏み込むと膜が締まり音程が上がります。また、「かかと側」を踏み込むと膜が緩み音程が下がります。
ティンパニのヘッド(膜、皮)は張力があり、引っ張って伸ばすとわずかながらヘッドが伸び音程が上がると同時に伸ばす前の状態に戻ろうとします。(ゴムを思い浮かべていただけると想像がつくかと思いますが、引っ張ると伸びますが元の長さに戻ろうとしますよね)ヘッドを引っ張った時にヘッドが戻ろうとして引っ張る力を『張力』と呼びます。
「クラッチ式」「ギア式」のペダル構造ではペダル機構でヘッドを引っ張り、任意の音程で固定する方式」なのに対し、「バランス式」のペダル構造はペダル機構でヘッドを引っ張った先に「バランススプリング」というバネがついており常に綱引きをしています。ペダルを操作することによってさらにヘッドを引っ張ると音程が上がりますが固定しなくても上がった先でまたバランスが取れ音程が安定し任意の音程を得ることができるようになっています。
「バランス式ティンパニ」は操作が簡単な反面、バランス(ヘッドとバランススプリングの綱引き)が崩れやすくいという欠点があります。ヘッドが新品なほど張力は強いですが、酷使したヘッドは張力も弱くなります。また、演奏中に強打すると一時的にヘッド側の引っ張る力がバランススプリングに勝ちバランスが崩れペダルが勝手に動くという現象が起きやすいのも「バランス式ティンパニ」にはつきものです。
各ボルトのチューニングを行ったあとにバランスの調整(バランススプリングの強弱の調整)をする事が重要となります。
ティンパニのチューニングのコツ
【ヘッドの位置のチェック】
ティンパニヘッドには本皮、プラスティックヘッドとありますが、どんなヘッドにも張る方向があります。一番わかりやすいのがそのヘッドを製作したメーカーのロゴがヘッドに描かれてますよね?また矢印も書かれてませんか?
ティンパニを叩く位置から一番奥にメーカーロゴ、その叩く位置とロゴを直線上に見て90°方向の左右に矢印マークがくるようにヘッドを置きます。
次にフープ(ヘッドに付けてある金属の外枠)とケトル(お釜型の開いた方の円)を見比べて上下左右斜めも含め等間隔で位置しているか見てみましょう!
もし、みなさんお持ちのティンパニがこの状態になっていなければ勇気をもって直してみましょう!
【チューニングボルトの長さチェック】
ティンパニを横から見てみましょう!ティンパニのヘッドを引っ張るネジ(チューニングボルト)を見てみます。長さはどうでしょう?全部のチューニングボルトが同じような長さであればOKです。
もし、長さが違う等ありましたらもう一度ヘッドがちゃんとセットされているか確認しましょう!
【いよいよチューニングです。】
バランス式ティンパニはペダルをいっぱいに戻した状態がチューニングピッチになるようにチューニングします。チューニングしている内にペダルが動いてしまうような事はありませんか?急激に動くような事があったりします。その際はバランススプリング調整がうまくいってない状態と言えます。急激に動く恐れがある場合はペダルに木などを噛ませて動くことを防止します。
各楽器(サイズ)のチューニングピッチは下記です。
(プレミアなどのバランス式以外ではチューニングピッチは異なります。)
32インチ D[レ](D18 2oct D)
29インチ F[ファ](F21 2oct F)
27インチ、26インチ A[ラ](A25 2oct A)
24インチ、23インチ C[ド](C28 3oct C)
20インチ E[ミ](E32 3oct E)
チューニングが大幅に違っているときは1つのチューニングボルトを一気に回さず、少しずつ全部のテンションボルトを回し任意の音に近づけていきます。
それでは、弊社でも使用しているティンパニチューニングの便利なグッズを紹介します。
【TAMA テンションウォッチ】
置くだけでその位置のテンション(引っ張り具合)が測れるすぐれものです。各ボルトの付近を測って見ましょう!同じような値になるように調整すればチューニングが楽になります。
ただし、同じ値になっていればチューニング完了と言うわけではありませんよ。あくまで各ボルト同じような引っ張りになるようにするための機械です。
【Tune−bot】
打楽器のためのクリップ型チューナーです。元々はドラムセットのためのチューナーですがティンパニにも使用出来ます。
ピエゾ方式でフープに挟んで周波数を表示します。A-442なら
32インチD=74Hz,
29インチF=88Hz,
26インチA=111Hz,
23インチC=131Hz,
20インチE=166Hz,を表示するようにチューニングすればばっちりです。ただし、ティンパニは倍音が多く含まれますので表示される周波数も目標が出にくい時もあります。そんなときは「FILTER」モードを使用すると合わせやすくなります。
でも、これを使用する時は各ボルトのテンションがまず均等になっているか確認して下さいね。倍音の方を拾ってチューニングなんて事になったら一生音程合いませんよ!
打楽器メンテナンスのバイブル本
打楽器(コンサートパーカッション)のメンテナンスなどが詳しく書かれている打楽器に係わる人のためのバイブル本とも言える本が2015年9月に発売されました。
田中 覚 著 これでOK!打楽器メンテナンス[コンサートパーカッションのチューニングと調整] が発売されました。
私も打楽器のメンテナンスをする立場ですが今更ながら為になることが多く書かれています。是非ご愛読してみて下さい。
今回は簡単に「ティンパニのチューニング」のご紹介をさせていただきました。
バランス式チューニングはチューニング以外にバランススプリングを調整することが重要です。チューニングしたらペダルを踏んだり戻したりしてペダルがスムースに動かない、どちらかに引っ張られるなどが起きないように調整します。ここ重要です!!
弊社で扱っているティンパニは主にヤマハ製ペダルティンパニ(バランス式ペダル)、プレミア製ペダルティンパニ(クラッチ式ペダル)になります。
クラッチ式のティンパニのチューニングはまた、少し違いますので別の機会にて...
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第3回もお楽しみに...